2005年 03月 28日
Mondovino |
ワイン業界についてのドキュメンタリーがあるから観に行こうと言われ内容を知らぬままついて行ったら、とても興味深い映画でした。世界中のワイン産地を訪ね、「ワイン業界」に身を置く人々にインタビューするもの。ブドウ農家に始まりワイン製造者、買い付け業者に輸入業者、ワイン店主、オークション専門家、評論家にコンサルタントまで。ワインに対する想い・意見がそれぞれ食い違っているのが面白い。
ワインのグローバリゼーション(画一化)の波に喘ぐ、フランスやイタリアのブドウ農家やワイン製造者。波にのるシャトーももちろんあり、カリスマ・コンサルタントのミシェル・ロランに言われるまま、彼の所有する「ラボ」で化学処理を施し、売れるワイン作りにいそしむボルドーやトスカーナの伝統あるワインの作り手たち。同様に、ワイン評論では神と崇められているロバート・パーカーの口に合うよう、ワインメーカーは必死なんだそう。なぜなら彼にけなされたワインは誰も買ってくれなくなるから。パーカー氏とその大親友のロラン氏、それに Wine Spectator 誌の結びつき具合には驚かされました。ロラン氏がプロデュースするとパーカー氏、ひいては Wine Spectator 誌での批評点数があがり、最終的に価格高騰につながるという傾向があるんだそうです。
カリフォルニアワインの代名詞ともなったモンダヴィの世界征服にかける野望と、それに対する人々の様々な思わくが、インタビューを通して綴られます。監督 Jonathan Nossiter には人を魅きつけ、本音を語らせる類稀なる才能があるに違いありません。一介のドキュメンタリー作家に、Rothchild が、英クリスティーズのワイン部門責任者が本音を語ります。写真を見る限りとても優しそうな目をしているし、各国語に堪能なのも一役買っているのかもしれない。それともそれだけ各人のワインに対する思いが強いということなのかしら。
ワインに限らず、安さと便利さを求めるあまり、地域ごとの特色とか作り手ごとの違いとかがなくなっていくのはとても悲しいことだと思います。でも、市場経済主義一辺倒で世界の格差が縮まる一方の現状では、こういう画一化は避けて通れない問題なのでしょう。売り上げ第一、マーケティングに重点を置くアメリカ式経営法に基づいてワインを商売の道具にしている人たちと、愛情を込めて、時として頑固にワインを作り上げる職人たちの考え方の違いは印象的です。
Film Forumにて4月2日までの上映。去年のカンヌ映画祭に出品され、評判も上々とのこと。日本ではシネカノンからの配給が決まっているそうです。米国公式サイト
by mistymont
| 2005-03-28 08:37
| 映画