ニューヨーク映画祭が始まった。先週金曜日のオープニングはウェス・アンダーソン監督の
"The Darjeeling Limited"。
ジュリアン・シュナーベルの新作を観る事にしていたのに、週末出かけることになり、チケットを無駄にしてしまった。それでも一週間で5本の映画を観た。
さて水曜の朝。家の前の大通りに、観たこともないほど大きなトレーラーが何台も停まっていた。角を曲がったところにある郵便ポストの張り紙(右写真)から察するに、この先には映画のセットがあるのだろうか。なんのロケだろうとわくわくする。この道は一方通行で道幅が狭いにもかからず、やはり巨大なトレーラーが何台か停まっている。一台だけドアが開いていたところから、ぎっしり詰まっているミキシングの機械のようなものが見えた。移動する音響編集スタジオといったところだろうか。近所に住む映画に詳しい友人に問い合わせたところ、
コーエン兄弟の新作の撮影中だとのこと。主演はブラット・ピットとジョージ・クルーニー。その情報だけでなんだか嬉しくなって軽い足取りで会社に向かった。翌日の朝、ジョージ・クルーニーを見た。ちょうど一撮影終えて、自分の演技をモニターで確認しているところだったらしい。金曜の夜、やはり同じ道で、会社帰りのオットが撮影現場に遭遇したらしい。その晩遅く(というか土曜の早朝)に最寄り駅に降りたったところ、ちょうどロケが終了したところだったようで、3日間に渡って辺りを占拠していたトレーラーが一台、また一台と動き出していた。ロケ現場の道は湿っていて(人工の雨を降らせていたので)、大勢のスタッフが後片付けをしていた。週末にもロケが行われていたら撮影風景が見られるかも、と楽しみにしていたのに・・・。NYを歩いていると映画やTVの撮影現場はそこここで行われているが、こんなに規模の大きいものに遭遇したのは初めて。それが家からほんの1ブロック先だったことが、何故か無性に嬉しかった。
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さて、今週ニューヨーク映画祭で観た映画は下記の5作品。
4 Months, 3 Weeks and 2 Days
Director: Cristian Mungiu
最近勢いづいているルーマニア映画。チャウシェスク政権下で違法とされていた中絶を行う女子大生2人の物語。主演女優 Anamaria Marinca の演技が素晴らしかった。今年のカンヌ映画祭パルム・ドール受賞作。
Stellet Licht (Silent Light)
Director: Carlos Reygadas
一度観てみたかった、カルロス・レイガダス。メキシコ北部に生活しているというメノナイト派(幼児洗礼を否定し、絶対平和主義を唱えるキリスト教の一派で、アーミッシュもこの宗派の一端なんだそう。)のコミュニティーが舞台。光とランドスケープ、それに自然の音が息を呑むほど美しい。
Secret Sunshine
Director: Lee Chang-dong
カンヌ主演女優賞を撮ったDo-yeon Jeon の演技に期待して行ったが、先述の Anamaria Marinca に軍杯をあげたい。でも彼女の表情の豊かさはすごい。顔を見ただけで感情が手に取るようにわかる。それが受賞の決め手か。
Go Go Tales
Director: Abel Ferrara
マンハッタンのキャバレーを舞台に繰り広げられる、クレージーな物語。豪華キャストが名を連ねるが、なんといってもこれは店長役のウィレム・デフォーの映画である。上映終了後、一体何が言いたかったの?とも思ったが、十分にエンターティニングではある。
Alexandra
Director: Alexander Sokurov
昭和天皇の『太陽』を撮ったソクロフの新作。エルミタージュ美術館全編ロケの "Russian Ark" で感銘を受けて以来ほとんど全ての作品を見ているが、今回の作品は何故かあまり響いてくるものがなかった。